Design With FontForge

A book about how to create new typefaces using FontForge

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プロジェクトを計画する

フォント・デザインが如何に多様であるかを理解したと思いますので、自分のプロジェクトをひとつのフォントだけに限定するのか、相互に関係するいくつかのフォントのコレクションを目指すのか、あるいは(現在では伝統的ですが)三つ四つのスタイル(字体)をもつファミリーやより大きな構成で行なうのかを決めたくなっているかもしれません。

書体ファミリーの一般的なスタイルは次のとおりです。(訳注: スタイルの日本語名称は参考訳です。

  • Regular(標準体)と Bold(太字体)
  • Regular、Bold、Italic(斜体); 最終的には、Bold Italic(太字斜体)も
  • Thin(細字体)、Light(中字体)、Book、Regular、Semi-Bold(セミボールド体)、Bold、Heavy(ヘビー体)、Black(ブラック体)
  • Thin、Light、Book、Regular、Semi-Bold、Bold、Extra-Bold(エクストラ・ボールド体)、Heavy、Black
  • Regular、Condensed(縦長体)、Bold、Bold Condensed(縦長太字体)
  • Narrow(細身体)、Condensed、Wide(ワイド体)、Extra Wide(エクストラ・ワイド体)
  • Regular、Semi-Flourished(セミ装飾体)、Flourished(装飾体)、Very Flourished(強装飾体)、Extremely Flourished(超装飾体)

フォント・ファミリーに典型的な組み合わせがあることにはそれなりの理由がありますが、あなたはまったく別の組み合わせを試してみたいと思うかもしれません。

プロジェクトの範囲は、もっぱらあなたの熱意とあなたが使える自由な時間だけで決定できるはずです。しかし、プロジェクトの範囲は多くはフォントのファミリーやコレクションが意図している用途、さらにもっと言えば、フォントの依頼人の要求内容によって決められているのです。間違いなく、プロの書体デザイナーにとっては、通常は後者の二つの側面が決定要因となります。

文字の質感

書体デザインで最も需要なことは、書体が醸し出す質感です。この質感というものは、言語化することが困難であるという点で有名ですが、これが、ある書体をその他の書体からはっきりと区別しているものなのです。

ポルトガルの書体デザイナー、ナタネル・ガマ Natanael Gama 氏は、フォントフォージを用いて Exo family というフォントをデザインしました。彼はホームページで、彫刻家 ジョン・ウィリアムズ John Williams に関する別プロジェクトについて語っており、その中の図で質感の連続的な組み合わせについての簡単な要約を掲載しています。

※訳注:「John Wiliams」へのリンクが切れているため、この部分の具体的な内容が把握できていません。

  • 比喩から抽象まで: 50%
  • 優美さから堅牢さまで: 30%
  • 静謐さから快活さまで: 0%
  • 不可解さから平明さまで: 15%
  • 実験的から標準的まで: 15%
  • 一流から普通まで: 15%
  • その他のアイデア: 美しさ、スペース外、人間の条件

グリフの数

フォントは、グリフがたったの一つだけであってもフォントです。しかし、数百から数千のグリフを持つフォントさえ可能です。プロジェクトが自ら始めたものであれば、グリフの数はまったく自由です。大文字だけにしたいとか、使用している他のフォントにあるグリフも含めたいとか、を自分で決めることができます。お客様の依頼を受けている場合には、作業しているフォントがどの言語に対応する必要があるのかをはっきりさせる必要があるかもしれません。また、いくつかのグリフを追加することで、より多くの言語で使えるようにするために、現行のフォントを拡張することが最終目標になることもあります。

グリフの数は意図的に設定し、多く詰め込みすぎるよりは、少なくし過ぎて失敗したぐらいの気持ちで行なうのがよいでしょう。書体を作成していると、多くの場合、よりたくさんのグリフを加えたくなります。しかし、あたらしいグリフを加えるよりも、中核となるグリフ群を改善し続けるほうが、たいてい有益です。

複数のスタイルを持つフォント・ファミリーの手順

もし最初から複数のフォントを作成することが判っていれば、体系的にフォント・ファミリーを計画・構築し、様々なフォント・スタイルも並行して作業すれば、ひとつのスタイルだけに集中して纏めて作業するよりも、時間を節約できます。

もちろん、すべてのスタイルをまったく同時進行で作成することはできませんが、各スタイルの特定のデザイン・ステップを完了することはできるでしょう。このやりかたを行なえば、スタイル間の関係がデザイン・プロセスの早い段階で確認できます。まずレギュラー(標準体)で一組のテスト用文字(たとえば「adhesion」)を完了し、次に同じ文字を別のスタイルで作成することが役に立つと感じるかもしれません。あるいは、もっと細かいやり方で進めて、基本文字(たとえば「n」や「o」)の特定の部分をすべてのスタイルについて検討していくこともできます。

予定しているフォント・ファミリーの大きさと構成によっては、補間可能なグリフのインスタンスを作成する時間が節約できるかもしれません。これにより、中間のスタイルを補間できるだけではなく、フォント・ファミリー内でのスタイル間の書体の違いに対するデザイン上の選択にも役立ちます。

考慮すべき書体の違いの概要については、「 フォントとは」の章を参照してください。

技術面: バージョン管理

作成したファイルの保存には、Git と GitHub を利用するようにしましょう。ソース・ファイルには「SFDir」フォーマットを使用します。

プロセルの概要

かつて、2010年に、Dave Crossland、Eben Sorkin、Claus Eggers Sørensen、Pablo Impallari、Alexei Vanyashin、Dan Rhatiganの各氏、および匿名の貢献者の方々が、ラテン語フォントのためのプロセス全体図を完成させました。

このプロセス図は Google Drawings で作成されており、このサイトと同様に「クリエイティブ・コモンズ・表示―継承ライセンス」に基づいてライセンスされています。

元データは「こちら」。

非ラテン語(デバナーガリ文字)対応版(英語表記)も「こちら」から入手できます。

評価環境

自分でプロジェクトを行なう場合、作成する書体を使用する媒体を考慮する必要があります。利用媒体の例としては、たとえば、ウェブやモバイル・プラットフォーム、デジタル・プロジェクター、安価なオフィス用インクジェットプリンターやレーザープリンター、高性能印刷所用レーザープリンター、雑誌のオフセット・リソグラフ印刷、高速大量新聞印刷、などです。

次いで、自分が作成したフォントの実際の結果を確認するために、使用媒体の組版技術を入手または利用できるように手配する必要がります。

書体のデザイン・プロセスを通じて、非常に役立つとわかるのは、普段利用してしているパソコンやワークステーションのモニターよりも高い解像度で、作成している書体を用いたテキスト例を確認することです。これは、通常は、「実」解像度が 1200 DPI と Adobe PostScript 3 を用いたレーザープリンターを意味します。個人向けでは、このような設備は約 500 ドルで購入可能です。2013 年時点での推奨事項は次のとおりです。

※訳注: 日本語版作成時(2023)、情報内容が古すぎて、正確な状況が不明です。

  • HP P2055d
  • Xerox Phaser 4510
  • Xerox Phaser 5550
  • Nashua/Ricoh P7026N

2013 年 5 月現在、フランスのフォントデザイン会社「Production Type スタジオ」には「強力な」コントローラーを備えた Xerox 7525 があり、購入費用は約 12,000 ユーロでした。この機種はリースなら月額 300 ユーロで、トナー・部品・保守費用込みでした。2015 年後半では、スペインのフォント・デザイナー、Octavio Pardo 氏は、Xerox Phaser 7100 をリースしましたが、似たようなリース条件にも拘わらず、月額 30 ユーロでした。

OpenType フォントの機能

あなたのプロジェクトで描き始める前に、OpenType フォントの機能を取り込むことができます。一般的な機能には次のようなものがあります。

  • liga 「リガチャー ligatures」(合字)
  • onum 「オールドスタイル数字 oldstyle numerals」
  • lnum 「ライニング数字 lining numerals」
  • locl 「ローカライズの字形 localized forms」
  • ssNN 「デザインのセット stylistic set」
  • cvNN 「異字形 character variant」

言語によっては、locl で機能する場合もありますが、そうでないこともありますので、各言語に特定の字形を locl と、 ssNN または cvNN のどちらかを用いて明示するのがよいでしょう。

OpenType フォントの規格では、推奨されていない機能もいくつか使用が許されています。

  • hist 「歴史的な字形 historical forms」

歴史的な字形の取り扱いに関するディスカッションはこちら: discussion on TypeDrawers.

参考文献